さよなら、三木鉄道

 一級河川加古川に添って走る加古川線の途中、厄神駅から、三木に向かってつながる盲腸線。それが三木鉄道です。赤字を累積した結果、廃止が決まり、今日でさよならとなりました。

 思い入れが強いのは、もちろん私が三木生まれだからですが、元祖鉄っちゃんだった鉄道マニアの父の影響で、電車が大好きな子供だったから。
 そして三木鉄道は、このちっぽけな町を出て、あらゆる線路につながる本線へと出て旅を始めるためには、必ず乗らねばならない、もっとも身近な鉄道でした。デビュー作の『夢食い魚のブルーグッドバイ』では、この町で育った若者ヤマトが、朝まだきのこの町を、やはりこの三木鉄道で旅立っていくシーンを書きました。
 鉄道は、小さな世界しか知らない私に、文字通り、未知の大きな世界への想像をかきたてる一本の道でしたね。

 でも、そういう鉄道の時代は終わったんですね。ただのノスタルジーだけでは、鉄道を維持してはいけないのはしかたのないことわかっていつつも…。

 今日は、私の出演じゃない「スーパーニュース・アンカー」で、とりあげられていました。
 ぼんやり見ていてびっくり。わが父親が出演している!

 そう、映画フィルムコレクターである父は、自分自身も対象時代から8ミリカメラでさまざまな風景を撮っているんです。この番組では、なんと、田園の中を猛進する蒸気機関車を、白黒フィルムでおさめていたのをご披露してました。
 もちろん、カラーになってからも、四季おりおりの三木を行く電車を写していたのを、私たちは子供の頃からよく上映してもらってましたが。

 わが父の写した映画ながら、この貴重な映像に、いっそう、この鉄道が疾駆した時代の重みが伝わってきました。
 ほんとうに、なくなってしまえば、また私の名かのふるさとの風景が一つ、なくなっていきます。
 ふるさとは遠くになりにけり。
 心から、三木鉄道を惜しむ夜です。
プロフィール

玉岡かおる

Author:玉岡かおる
兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学卒業。1989年、神戸文学賞受賞作の『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で新潮社より文壇デビュー。2007年11月「お家さん」刊行

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