2014年09月15日 10:06
山口淑子さんが亡くなられた。
享年94歳。

お目にかかったのは、劇団四季『李香蘭』初演時。八重洲の東京フォーラムでの記者会見のあと、帝国ホテルの一室でのことだったと記憶している。
ご自分の人生がミュージカルになることについての感想をお伺いするものだった。
インタビューには主演の野村玲子もいらして、山口さんは、きれいな女優さんがご自分を演じて下さることについて、まずご満悦、というのがなんともかわいらしかった。やはり、美しい人というのは、自分の美しさが違って伝わることには抵抗がおありのようだった。(笑
このインタビューは『la・Harpe』(劇団四季会員情報誌) に書かせてもらった。
さらに、のちになって、玉岡かおる初のノンフィクション集を作った時、改めてとりあげ、印象を書かせてもらった。
『自分道(じぶんどう)』(角川ssc新書・刊) という本である。
近代を鮮やかに生きた女性7人をとりあげたが、山口さんは、その中の、揺るぎない一本柱。
鈴木よねや、金子直吉の妻・徳子から始まり、らいてう、市川房枝に至る”女の夜明け”の時代まで、男主導で驀進した近代という1時代にあって、あざやかな生き方をした女性たち7人のうちの、お一人だ。
むろん、そのラインナップの中でも、山口さんは、まごうことなき、愚かな戦争の生き証人であった。
お会いした時、まだ80代後半でいらしたことになる。
作家特有の好奇心が先走り、質問責めにしてしまったことを思い出すが、 時折、記憶が過去をさまようものの、混濁することなく、本当に賢く、風格のある存在感は、誰が何と言おうと別格のもの。
女性がほんとうに美しいとはこういことか、その存在で示されたことを忘れられない。
ご縁をいただいたことを感謝し、 心からご冥福を祈りたい。