ご縁にみちびかれて、この日

 今日は、コベルコパーソネルさんにお招きを受け、ホテルオークラ神戸で講演させていただいてきました。
 コベルコさんといえば、『お家さん』の鈴木商店の第一の子会社、神戸製鋼所さんにつながる企業。こちらの会社も、OBの方をはじめ人材を関連企業などにご紹介するお仕事だそうで、人の出会いや才能、自社の人材をとても大切にした金子直吉以来の理念が受け継がれているのだなと感慨深くお伺いしておりました。 
 そもそも、お招きいただいたのは夏。
 まだ小説を完成させたとは言い難いけれどいちおう脱稿したと言えるかなっていう、そんなあやふやな時期のことでした。
 つねづね、神戸女学院の大先輩であり、神戸経済会の重鎮としていろんな場でご一緒させていただいている神戸風月堂の下村会長さんからのご紹介。
 「講演なら、ちょうどこんなん書いているんですけど、そんなテーマではどうでしょう」なーんていう話から、「それではぜひその本ができた時に」ということになったのが、ほんと、昨日のようです。
 しかし、軽く請け負ってしまったものの、もしも本ができなかったらどうしよう、まにあわなかったらどうしよう、えらい約束をしちゃったもんだ〜、と、気分は崖っぷち。そして、ご存知、9月からのあの突貫工事が始まった、というわけです。
 そう考えると、まさに、神戸の、鈴木商店の流れを汲む皆様に、大きく後押ししてもらったことになるんでしょうね。ああ、ほんとにまにあって、よかった。

 以前、ラグビーの観戦に行った時、神戸製鋼所スティーラーズの平尾さんや本木さんに、
「今、鈴木商店を書いてます」
と言うと、
「えーっ、うちの会社を書いてるんですか」
 という反応がとびだしたほど、社員のみなさん方が自社の歴史をしっかり熟知しておられることに驚いたものです。
 さて、そんな、「うちの会社」の物語、身内の皆様からはどんな反応が聞かれることやら。著者の楽しみはここしばらく続きそうです。

文学部日本文学科で講義する

 今日は甲南大学で講義の日でした。
 文学部、日本文学、日文・・・ああ、なんていい響き。文学に学ぶべき価値があり、そして文学に人や世の中を変えるだけの力がある、ということを信じさせる響きがあります。
 文学を学ぶ、なんて、できれば私ももう一度学生さんになって勉強しなおしたいくらいですが、いやはや、講義をする壇上に立つ側になってるんですからね。自慢じゃないけど、この私、彼らと同じ大学生の時は、若気の至り、遊んでばっかりいました、ああもったいない。勉学の意義なんて、年をとらないとわからないもんです。

 さて、甲南大学には私の友人、同級生や、テポドンたちの友人も多数、在籍している親しみ深い大学ですが、創始者はなんと、先の長編『天涯の船』で描いたモデルの松方が失脚した後、川崎造船所の再生を引き受けた経済人だとか。これをご縁と言っていいのかどうか、神戸には、まだまだ知らない歴史が生きているし、どこかでこうして繋がっているものかもしれないですね。

 さて、大学のご好意で、せっかく『お家さん』上梓のタイミングでの講義だからと、生協書籍部さんを通して、本も用意していただきました。でも、学生さんには、上下二巻のハードカバーは負担でしょう。私も、学生時代は、欲しくてもハードカバーには手が出ないこともありましたし。
 でも、そこは生協さん、手持ちがない学生さんには、学生番号だけ告げて、本は先渡しで、ある時払い、という粋なはからい。さすが。ちょっとカンゲキしました。やはり、学生時代にこそ文学作品は読むべきだし、書いた作家本人が目の前にいるなんてこと、めったにあるわけじゃなし、こんな機会は逃すべきじゃないですもんね。
 申し訳ないなあ、と思いつつ、逆にこんな時こそ、私も読者とフェイス・ツーフェイスで接触できる貴重な機会なんです。
 聞けば、さすが文学部・日文の学生さん、こんな分厚いの読むのたいへんよ、なんて言うと、すずしい顔で、いえ、3日あれば読みます、なんて言い切りました。
 うーん、たのもしい限り。若者の活字離れなんてどこ吹く風。読んでさえもらえれば、書き手作り手の側が送りだす文学にも、なんらかのことができる、人を世界を変えられる、ってもんです。
 さて、若い読者がどんな感想を持ってくれたか、これはとても楽しみになりそう。
 

東京〜神戸を飛んで飛んで

 出版当日の22日には読売新聞、翌23日には朝日新聞に、それぞれ広告が大きくでましたが、皆様、お目に留まりましたでしょうか?
 実は私も、広告の大きさに驚いています。
 でもそれだけ、大勢の人に読んでいただきたい、そして日本人の誇りと希望を味わっていただきたいっていう思いが、この面積にはこめられているような気がします。
 出版から3日。広告だけでなく、ぼちぼち書評やインタビューも出始める頃。背筋を正して反響を待ちたいです。
 さて今日は、ブロードキャスターでの上京ついでに、新潮社で新聞・週刊誌にインタビューしていただく。今回は男性記者ばかりでしたけど、おもしろかった、ぜひ話を聞きたかった、と言ってもらえるのはなによりのご褒美です。いちおう、経済小説というスタンスを意識しながら書いたのは成功したと思っていいでしょうかしら。
 ブロードキャスター終了後は、翌日の予定にそなえて、羽田のホテルへ。なんと、加古川は兵庫大学で、「地才地創シンポジウム」が開催され、地元人代表としてスペシャルナビゲーターという大役をおおせつかっているもので。
 トンボ返りもいいとこですが、朝、神戸空港に帰り着いたその足でシンポジウム会場へ直行です。
 なにしろ東京の夜は長いので、睡眠時間がちびっとしかないから、朝早いのがつらいですぅ。でも、播磨の上空からは、朝の大気の中で輝く無数の溜め池を眺められて、気分はふしぎに澄んでいく。ああ、ふるさとは美しきかな。

 こんなふうに、あいかわらず余裕のないスケジュールを飛んでますが、さあ、出版のよろこびに浮かれるのはそろそろおしまい。新刊作品の真価がいよいよ問われ出します。何の世界でも同じですが、ここがプロの厳しいところですよね。売れてるか手に取られてるか、数字との戦いがいよいよ始まりました。皆様、なにとぞよろしくお願いします。
 

お家さん 上巻 (1) お家さん 下巻 (3)

ついに出た! 新刊、世に出る

 4年もかかってチンタラ、マイペースで書いてきた作品ですが、この2か月ばかり、猛烈な仕事ぶりのおかげで、とうとうこの日が来ました。
 『お家さん』、全国一斉発売です。
 夢みたい〜。
 私はまだ怖くて、書店に近浮くことも出来ないんですけどね。
 「もう出てたよ! 平積みになってた!」
 第一発見者の友人からのメールは神戸六甲の本屋さん。さすが、神戸大学のお膝下、なんせ実在の鈴木商店には神戸高商(現・神戸大学)の卒業生がどっさり入社していましたからね。
 夕方には、地元の友人が、加古川紀伊国屋さんで手に入れて、やってきました。いっぱい積んであったで、と。
 もうドキドキの連続です。売れてるかな、がんばってるかな。
 みなさん、書店で私の本を発見したら、よくぞ生まれて来たね、とねぎらってやってくださいまし。 m(_ _)m


お家さん 上巻 (1) お家さん 下巻 (3)

東京駅と福崎インターチェンジ

 発売前のパブリシティに東へ、西へ。どこへ行っても、「玉岡さんて、タフですねえ〜」と驚かれるのは、やっぱり、今、まさに作品を送り出すまぎわの、母だからではないでしょうか。
 でも、あわてん坊はなおりません。自分の犯した失策に、自分で尻拭いするため走り回るから、普通の3倍は動き回ってるかもしれません。
 その一例の、こんな失策。

 インタビューでおしゃべりしすぎた後、最終ののぞみで西へと帰る東京駅で、切符なくした〜!
 落とし物・忘れ物の女王を自認するおかげで、切符はわけのわからんところにしまいこまずに、いつも裸にして持ち歩くことにしている私。ところがこれが裏めに出ました。トイレに入って、バッグを置いた棚の上に、よく見えるようにと並べて置いたのはこれまでの経験で得た知恵。なのに、これを忘れて出て来たんだから、もうつける薬はありませんわ。 
 すぐに気づいて戻ったんだけど、ない!ない! 置いたはずのところには何もない!
 後で考えたんですが、自分が使ったトイレの、隣のトイレを探してたらしいんですよね。もう処置ナシ。そりゃ、あるわけないでしょ。
 でも、さあパニックです。駅員さんに訴えたものの、乗る予定ののぞみの発車時刻が迫っているから、とりあえず乗って中でもう一度切符を買いなおしてくれ、と。そんなあほな〜。
 いや、自分のあほさを責めてもしょうがない。幸い、エクスプレス予約だから座席の記録がケイタイに残ってるし、乗車券の領収書もあるし。強気で談判しようと指定席にすわる前に車掌さんに事情を話したら、なんと、私の切符を拾って届けてくださた方がいた!
「これですね」
 車掌さんが見せてくれた切符、東京から加古川。まさしく私のです。
 いや〜、ありがたいですぅ、東京駅もまだまだ捨てたものじゃありませんね。トイレで切符をゲットしてくださった方、この場を借りてお礼申し上げます!!

 さて、今度は兵庫県福崎町。町立図書館へ、新刊出版記念ということでお話をさせていただきに出かけたのですが、またまたうっかり地図を忘れた! しかも、わがZくんに搭載したうちのカーナビ・皇帝は(毎回、立ち上げるとソクイしました、と言うことから。即位? いえ、測位かもしれんけど。)は、福崎まで1期間半かかる、と示しているし。そんな遠かったっけかな??
 電話で先方に尋ねると、福崎北インターをおりればいいとのこと。そんなん、40分ぐらいの行程やんか〜。
 余裕で播但道の福崎を通過、すると皇帝は、
「左、中国道、広島方面へ」
と、お命じになるではありませんか。
 あれぇ? おかしいなあ、とは思いつつ、確かに福崎「北」はまだ通ってないし、と、皇帝の導くままに、左、中国道へ。
 ところがこれがドツボの始まり。標識は広島、岡山、とはるかかなたを指していて、もう福崎なんてどこにも表記がないではありませんか。走れども走れども、ひたすら山の中の高速道路。いったい私はどこ行くのぉ〜?? 次の出口の山崎にしたって20�先です。
 やりやがったな、皇帝〜!!! そりゃあ、20�先の山崎周りで福崎へもどったあかつきには1時間半くらいかかるでしょうさ。
 間違いに気づいた時は、ほぼ到着予定時間。もう発狂寸前で先方に、遅れますと連絡しましたよ。
 でも泣いてなんかいらんない。皇帝は根性ワルでも、なんたってZくん、メーターに280�/hの表示があるのはダテじゃないんです。日曜の中国道をぶっとばしてやりました。みんな、次々道を空けて先を譲ってくれましたし。ありがとう、ありがとう。おかげで、山崎〜福崎を、5分で戻りました。遅れると連絡していた会場側も、「えっ、もう? えらい速いですねえ〜」とびっくりされてましたが。

 いやいや、先に周到に準備していればこんなムダな動きもせんでいいんですが、この性格、死ななきゃ直らんようです。オソマツ。
 

お家さん 上巻 (1) お家さん 下巻 (3)

ついに見本ができてきた!!

 今日は、東京に来て、新刊について各新聞社の文化部記者の方々に取材していただく日。新潮社の会議室で、朝から夕方まで、6件です。
 
 元来おしゃべりな私は、ついついいらない話も弾んでしまって、各1時間の予定が、押すわ押すわ…。午後からは喋りすぎて顎や頬がだるいくらい。だって、あれだけ苦労した作品、難産の子の誕生を話す母のよろこびのように、話は尽きません。

 そういえば前作『天涯の船』の時も、前夜から新宿の高層ホテル泊まりで取材に臨んだものですが、せっかく朝はゆっくり、と出版社には配慮していただいたにもかかわらず、あの頃はまだテポドンズが高校生でしたから、まだ東京じゅうが真っ暗な朝6時から、テポドンにモーニングコールして、10分おきにまたかけ直してたたき起こして、学校へ行くまで見届けなければならなかったものです。結局、一人ホテルに泊まってもゆっくりなんてできない母たる宿命を感じたものでした。
 ところが今回は、義母をデイサービスに送り出す役目を彼女らに託しての東京ステイ。ちゃんと起きたか、連れていってくれてるか、時間は遅れてないか、遅れるなら園に連絡しなかいけないし…と、やっぱりゆっくり寝てなんかいられない朝の電話。
 ところが、テポドン、電話に出るや、まだ何も喋ってない私を一喝、
「わかっとる! 今行きよる!」
 はいっ、そうでしたかいな、すんません。
 彼女たちなりに、おばあちゃんを園まで送ってから自分たちも学校へ行くっていうんで、電話に出るどころか一分を争って殺気立ってたんでしょう。いやいや、お取り込み中すんませんでした。

 いやー、これって歳月、感じさせますね。だって、昔はそのおばあちゃんにテポドンズを預けて、世話をたのんで、そして東京へ出てきてたんですから。
 子供は育つ。人も育つ。作品ごとに、歴史を刻んでいる気がします。

 さてその新刊。
 装丁画はすでにご覧に入れましたけど、いよいよできあがってきた見本、すてき、のひとことです。
 上下巻で色に濃淡をつけ、上巻が朝の神戸港、下巻が夜の神戸港をあらわしています。ほんとに綺麗な、品格のある本です。
 これが全国の書店に並ぶまで、もう、カウントダウン。よくぞこの日が来てくれました。みなさんに会えるのも、本当にあとわずかです。装丁も中身も、うふふ、期待してくださいね!


 

装丁、出来!!

 お待ちかね、新刊『お家さん』の装丁画ができてきました。
 今回は、いつもは江戸時代小説の本の装丁を得意となさっている画家の先生にお願いしての明治の神戸港が表紙です。
 帆船、蒸気船を浮かべた港と、奥に広がる六甲の連山。誰が見ても「あ、神戸」とわかるこの風景、もうここから物語が始まる気配いっぱいでしょ。
 上下二巻組なので、色合いを微妙に加減して上巻と下巻の違いを出すそう。
 さっそくとフロントページにも飾ってもらいましたが、いかがですか?
 このあわあわとした表紙のむこうに、みなさんの息もつかせないドラマがころがりだします。うっふっふ、楽しみだなあ〜。 
 発売は22日。もうすぐ、会えます。
 

 

エリザベス女王杯で撃沈

 今年もやってきました、エリザベス女王杯。この日はレディース・デイで、JRAが関西在住の女性経済人・文化人を貴賓室にお招きくださるの。馬場におりて、そば近で馬やジョッキーを見せていただけるのも、こんな機会ならでは。
 でも、これが、なかなかスケジュールを合わせるのがムズカシくてね。でも、今日はがんばって調整し、かけつけてきました。
 なにしろ、懇親会中、予想大会と銘打って、『スーパーニュース・アンカー』でもご一緒させてもらってる関西テレビの競馬アナウンサー、岡安譲氏のトークが登場、予想と合わせ、おしゃべりで楽しませてくれるというスペシャルもありますし。
 もちろん、全部買いました、岡安さんに敬意を表して。ほかに、自分なりの予想もこめて。ふだん競馬なんかやらないシロウトですけん、まあ、正真正銘、年に一度のお遊びですね。
 周りでは、皆が期待していたウオッカが出ないとあって、予想は混迷をきわめてるようでした。なのに何も知らないシロウトがいきなり勝とうってのがどだい無理な話。全滅して、気分はオケラで帰ってきました。
 ああ、今まではビギナーズラックが長く続いて、それなりに買ったり、負けたり、トータルでちょい勝ち、ってとこだったんですけどねえ。全負けじゃあ、何がオモロイのかわかりません。ま、来年まではやりません〜。

児玉清さんと対談アゲイン

 雑誌『波』での対談で、児玉清さんに、お目にかかってきました。

 ブックレビューでも何度かお世話になっているうえに、『天涯の船』では涙が出るような推薦文をいただいて、さらに『銀のみち一条』が完結した時の対談でも、笑顔でお相手をおひきうけくださったご縁です。もうこうなると、児玉さんのご感想が聞きたいばかりに、またまたお願いをしたら、今度も快くおひきうけくださいました。カンゲキ。
 
 あのクールな児玉さんが、目を輝かせながら、おもしろかったよ〜、と言ってくださった時にはもう舞い上がりましたね。いや、自信はあったんですが。
 同席した編集長、「玉岡さんの元気にはびっくり」。あはは、考えてみたら、ほんと、一人で児玉さんを独占して喋ってたんですね。反省。

 なんといっても読書家で知られる児玉さん、それも外国文学を原書でばんばんお読みになる方なので、この日の会場になった丸の内ホテルでは、さっそく時間前に丸善に寄ってどっさり原書を仕入れてこられたご様子。試しに見せていただき、どれも聖書のようにぶあつく重い本なのにはびっくり。
 読みたかった本を手に入れた興奮で、輝いているお顔の児玉さんでした。
 あらためて、好きな本を買う、読む、味わう、そんな、本をめぐるしあわせを確認したことでした。


 
プロフィール

玉岡かおる

Author:玉岡かおる
兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学卒業。1989年、神戸文学賞受賞作の『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で新潮社より文壇デビュー。2007年11月「お家さん」刊行

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