やっと手放す

 さあ、念校も終わりました!
 でも、最後にまだ、消し忘れていたフレーズがあって、よくぞみつけてくださいました校閲様〜、って感じです。もしもこのまま行ってたら大恥かくところだったとひやひやものです。
 だいたい、生来、迂闊なあわて者。みんなが、うっそ〜、と驚くようなことをやってのけるアバウト教信者ときてますから、原稿でもケアレス・ミスのオン・パレード。小さなミスのつもりがストーリー展開にも影響を与えるミスに発展、なんてこともよくある私。
 今回はかなり反省したつもりですが、次回作に活かされるか、っていうと、ため息です。だって、小学校一年の時の通信簿から、「うっかりミスが多いです。もう少し落ち着いて考えましょう」って書かれてたのが、この年になって直せるかというと、……疑問です。
 でも、反省って、次に活かさなければ意味亡いですもんね。気を引き締めたいと思います。

 ということで、いよいよ書き手の私の仕事は終わってしまいました。あとは装丁、帯コピーと、ここからは編集者S嬢の仕事です。
 考えてみれば、全国の書店に並ぶのが11月20日。今頃こんなことやってて、ほんまに出来上がるんやろか、と疑心暗鬼もありますが、ひとつひとつステップを上がり、渾身の作が産まれ出る瞬間はもうすぐそこまで来ています。乞うご期待。

 

産みの苦しみ、なお続く

 校正ゲラをもどして、へたっと自分時間をとりもどしたのもつかのま、やってきました再校ゲラが。

 すごいでしょう? 何のことかいまいち事情がわからん、とおっしゃる方も多いでしょうが、著者が書き上げた作品を、校正→再校→念校→校了と、日本語のプロの集団がチェックにチェックをかさねてより完全なるものへと仕上げていく過程。みなさんのもとに私の作品が届くまで、こんな仕事の課程を経てるんです。

 それでも人間の仕事ですから、完璧、と思っても間違いはみつかったりするんですが、新潮社の校閲部は、この業界では知らない人がいないくらいの厳密さ。この段階で叩かれまくっているから、あとあと読者から届くたいていのご意見もぜーんぜん怖くないわけです。だって、重箱の隅をつつくようなご指摘受けても、申し訳有りませんがとっくに検討ずみのうえでのその語の選択です、ってお返事できますから。

 ということで、もうひとヤマ。再校が実質最後の手直し、加筆のチャンスなので、いろんな誘惑に負けず、書斎にこもりますわ。
 

 
 

落語にまったり聞き惚れるの巻

 今日は朝日新聞関西21の交流会で、ひさしぶりに落語を聞きました。ヒルトンホテルのパーティールームにしつらえられた高座に挙がるのは期待の若手、蝶六さん。
 そういえば大阪では、天神橋筋にある繁昌亭も大人気で、上方文化の賑わいの灯が勢いづいて久しいのです。
 話芸は、やっぱりテレビでもなくラジオでもなく、こうして狭い空間に膝突き合わせて楽しさがわかるものですね。
 行政からは一銭も出してもらわず市民の力だけで寄席を再建するという、いかにも上方らしいやりかたでの町おこし。でも、いちばんの活力は、寄席という建物ではなく、それを格にして集まってくる人、人、人こそ力なんだ、と実感します。そして、それだけの人々をひきつけてやまない、文化の力なんですね。
 随所で町おこしが盛んな今、上方はきっといい先例になりますね。

シンガポール・ズリングで乾杯

 死にものぐるいの初校がすんで、それから玉岡は何やっとんじゃい、とのお叱りの声はごもっとも。
 この間、読売新聞の「週刊日記」に書きましたので、そちらを読んで埋めてくだされ。いや〜、売文家たるもの、日記もこうして原稿のネタになるわけで。
 
 何をしてたか、ざっとお話ししますと、編集者から、ゲラは印刷所にもどしましたよ、との連絡を受けるや、どっと緊張が解けてへたりこみましたわ。
 でも立ち直りも早いんです、私。その翌日から、雑誌『大人のウオーカー』の取材でシンガポールへ旅立ったと言えば、やっぱり驚きますよね。もしもゲラの戻しが一日でもずれたらどうするつもりだったんだ、と問われれば、あははは、です。
 何にせよ、毎日あんまり寝てない状態で、シンガポールへ。
 今回は、建造されて120年の節目を迎えるラッフルズホテルの取材です。なんと、美味しすぎる〜。
 たまには玉岡、こんなうまい取材も許されていいでしょ。あんなにがんばったんだから。

 とはいえ、やっぱり仕事ですからスケジュールはオニのようにタイト。それでも、カメラマンが写真撮ってるわずかな待ちの時間を盗んで買い物に励みましたわい。なんといっても今回の戦利品は民族衣装。『大人のウオーカー』新年号をぜひお楽しみに。

 一週間前に船で出掛けた香港があまりに昔と変わってしまっていただけに、シンガポールの清潔さ、公正さ、穏やかさには、一目で惹かれてしまった私でした。
プロフィール

玉岡かおる

Author:玉岡かおる
兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学卒業。1989年、神戸文学賞受賞作の『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で新潮社より文壇デビュー。2007年11月「お家さん」刊行

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