小説家玉岡かおるの日記

華麗! カルメンに酔う

 ゆうべは佐渡裕さんが芸術監督としてプロデュースしたオペラ「カルメン」を見に、兵庫県立芸術文化センターへ。
 ひさしぶりのオペラなので、観客としてもドレスアップして楽しみたいところです。ちょうどこのあいだハノイで作ったばかりのシルクのワンピをおろせる機会になるのがうれしい! でも午前中は新聞社の仕事があったので、あまり羽目を外すわけにもいかず、やはりどう装うかはオペラに出かける時の、心躍りながらも悩ましい問題なのでした。

 さてそのカルメン。
 いちばん知られているオペラであるのは、曲を口ずさむとだれもが「ああ、それね」と反応することでも裏付けられていますよね。私も実際、いちばんたくさん見ている演目です。それだけに、「今までにないカルメンを」との佐渡さんの意気込みもわかるというもの。
 だいたい、カルメンといえばとんでもない毒婦で、日本人からしてみればリアリティに欠ける女性。一般人の目から言うと、いくらワルでも、もう少し悩んだり揺れたりするでしょと、あまり共感ができないのがこれまで見てきたオペラでした。まあ芸術作品だからそういうものなのかな、と、歌や音楽だけの評価値で見ればよいのかと、中途半端に納得してきた私なのですが・・。
 ところがたしかに今回のカルメンは違う。

 人間であり一人の女が、ちゃんと見えてくる。同じ日本人である林美智子さんが演じるということもあってか、カルメンのあでやかさや存在感はそのままに、林さんのかわいい容貌が救いになって、従来のようなどんとこい型のオヤジ女ではない、一瞬の逡巡やあきらめ、そういった微妙な心の揺れがたしかに伝わってくる可憐なヒロインが、できあがっていました。
 こうでなくっちゃ、いくら海千山千の毒婦でも、かわいさや弱さがなければ次々と男をひきつけたりはできないはずですもんね。
 たくさんの人たちが出演するのも舞台に幅を持たせてました。佐渡さんが指導なさっている子供たち、市民の歌唱チームだそうで、晴れの舞台に出演できる光栄は、今後の練習活動にも励みになるでしょうし、何より、大きな財産でしょうね。

 終演後、楽屋に佐渡さんを訪ねさせていただくと、それはもう汗びっしょり、すべてやりきった感が漂って、笑顔にもその余韻が感じられました。お疲れ様。
 このあと、舞台は東京へ。きっと多くの人たちを感激させオペラってこんなにおもlしろいんだと伝えていってくれることでしょう。
 
 劇場を後にして、晩御飯はフレンチのイグレッグ・テアトルで、オリジナルのカルメンのコースでもう一度カルメン談義。
 ああ、まだ頭の中を、エスカミーリョのうたう景気のいいトレアドール、そしてカルメンの粘着質なハバネラが、とぎれることなく回って止まりまーせん。

哀愁のエリザベート

 行ってきました、宝塚、月組のエリザベート!
 先週末から鼻風邪で(新型インフルではありません、念のため)、日曜は一日、家でダウンしていたくらいなのですが、さすがにエリザとあっては寝こんでなんかいられません。
 第一、大劇場の幕が上がるや、風邪なんかぶっとんでます。
 もうアドレナリン出っぱなし。
 髪の毛からも放熱で、頭も汗をかいてました。すっかりハイテンション、足取りは「最後のダンス」のステップもどきで、完璧に元気になって帰ってきました。
 瀬名じゅんのトートは、ほぼ理想ですね。エリザは、花総まりのような、過去の完全形の記憶があるから、どうしても私、辛口になってしまいますが、皇后という役柄の気品や威厳を演じるのって、やっぱり難しいことなんですね。でも風七瑠海さん、身長があって、舞台映えする。鏡の間での独唱は妙に胸に響きました。
 何はともあれ、私のベスト・ワンの演目。年を経て、自分の人生の舞台が進んだからでしょうか、エリザをいびるゾフィーがなんとも哀愁ただよって見えたり、「二つのボート」をうたう置いた老夫婦としてのフランツとエリザに、わけもなく涙がにじんできたり。
 見る観客の環境や年齢で、こんなにも哀愁漂う深い作品だったとわかる、それも、長く宝塚を見続ける楽しみかもしれません。もっと年を重ね、人生の達人といわれるようになっても、また何度でも見たい作品です。
 

ほたるを見に、中播磨へ

 春は桜、秋は紅葉。その間の夏には花火もあるし、ほんと、四季に恵まれた日本に住むのはしあわせ。
 でもさらに、初夏には初夏の風物詩がまだあります。そう、ほたる。清い水にしか住まないだけに、ほたるは水環境が健全かどうかのバロメーター。そんなほたるを見に、今夜は中播磨の八千代町に行ってきました。
 15年ほど前、まだテポドンズが小さかった頃に訪ねた同じ場所。あの時は遊歩道にまでほたるが乱舞し、この世の景色とも思えぬ幻想的な宵でした。覚えているか、尋ねてみたら、子供ごころにもインパクトがあったようで、あのすごいほたる、と記憶は褪せてはいないようです。
 ただ、今ではほたるの名所として、すっかり有名になりました。週末ともなると押すな押すなの観光ポイント。駐車場に入りきれない車がすらり並んで、ひっきりなしに交差するヘッドライトの明るさで、ほたるのともしびもかすみがち。
 ライトやネオン、家の灯りのなかった昔は、ほたるの乱舞は怪しいほどに明るかったのでしょうね。
 それでも、川岸にはたくさんのほたるが飛び交っていて、しばし、みとれる初夏の宵。地元の人たちの、ほたるが住める清い水、美しい川づくりへの努力のほどがしのばれます。  
 美しい水の国、日本。ほたる飛び交う水の里、播磨。ふるさとは、いつまでもこうあってほしいですね。
 
 
 

ソウルから

 ソウルに来ています。
 平日のせいか、あるいは新型インフルエンザのせいか、飛行機はけっこうすいていましたよ。
 今回は、いつも観光などする間もなしに買い物に明け暮れていたのを反省し、今回は韓国の世界文化遺産を訪ねる旅です。さっそく今日は昌徳宮。もっとも完璧なかたちで保存されている古宮です。ドラマでよく見かける場所だけに、親しみもひとしお。
 それに今日は、木曜だけ自由に観覧をゆるされている日なので、時間にとらわれず、ゆっくりまわってきました。
 幸運なことに、演慶堂で、古典芸能のコンサートが催されていて、見たかったコングムやカヤグムの演奏、舞踊、それにパンソリまで、かぶりつきいの席で味わうことができました。
 韓国の伝統芸能の繊細さに、あらためて敬意。
 明日も、水原城など、がんばって行ってきます。
 もちろん、食い気もショッピング魂も健在。返ったらまた写真をアップするのでおたのしみにね。
 

仕切りなおし

 6月の声を聞いて、同時に、新型インフルエンザの終息も宣言されて、やっと明るい初夏の空気を味わうことができるようになりました。
 私も、この時期、ソウル旅行を予定していたのですが、一緒に行くメンバーの会社で出張禁止令が出ていたために見合わせ中でした。それが今日、解除となったので、ソッコー、晴れてレッツ・ゴーです!
 街ではころもがえ。お役所ではかりゆしウエアにクール・ビズ。新しい季節、新しい気分でまいりましょう。
 ソウル滞在記はまたのちほど。おたのしみにね。
 
プロフィール

玉岡かおる

Author:玉岡かおる
兵庫県三木市生まれ。神戸女学院大学卒業。1989年、神戸文学賞受賞作の『夢食い魚のブルー・グッドバイ』で新潮社より文壇デビュー。2007年11月「お家さん」刊行

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